東野圭吾作品の世界

東野圭吾著作の書籍からその世界観を独断と偏見で解釈します!

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「学生街の殺人」を読んでノスタルジックな気分に・・・

学生街の殺人 (講談社文庫)

学生街の殺人 (講談社文庫)

 

この「学生街の殺人」は、大体以下のような内容である。

舞台は、大学の正門の位置が変わったために寂れてしまった学生街。その学生街で暮らす津村光平が主人公。彼は、大学卒業に卒業もせず、親には大学院に進むと嘘を言って、そのまま学生街に住みついてしまう。彼が就職しなかったのは、将来の進むべき道が見つからなかったからである。

そんな光平の身近な人間が次々と殺されていく。

一人目の犠牲者は、光平のアルバイト先の同僚・松木元晴。彼は、自分の過去を一切しゃべらない人間であったが、光平とは馬が合い仲良くしていた。

二人目の犠牲者は、光平の恋人・有村広美。彼女は、光平には内緒で身障児施設に通っていた。

三人目の犠牲者は、広美が通っていた身障児施設の園長。

松木元晴と有村広美は、光平を通じて知り合いであるだけで、まったく接点が無い。その二人が、なぜ立て続けに殺されなければならなかったのか?

そして、広美が内緒で通っていた身障児施設の園長までもが殺された理由とは?

この「学生街の殺人」のキモは、やはり、光平の恋人・広美が殺された事件である。一人の人間が殺される時、犯人の殺害動機というのは、通常は一つである。しかし、有村広美が殺された事件には二つの殺害動機が存在していた。しかも、一人ではなく、まったく関係の無い二人の殺害動機が密接に絡んでいたことが、構成としては面白く感じた。

 

それにしても、この「学生街の殺人」を読んでいると、ノスタルジックな気分になります。主人公・津村光平の鬱積した心情が今の自分なら理解でき、「この気持ちが大学生時代の自分にあったらな~」と思うからなのかもしれません。僕の学生時代は実にノー天気なもので、将来の進むべき道のことなんて露ほども考えたことがなかったですからね。