東野圭吾作品の世界

東野圭吾著作の書籍からその世界観を独断と偏見で解釈します!

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「流星の絆」は三兄妹だけの絆ではなかった!

「流星の絆」という小説は、『夜中に流星を観にいっている間に両親が殺されていて、その復讐を誓う三兄妹の物語』・・・簡単にまとめるとこういう話です。

「流星」と「両親の殺害事件」が結び付いていることで、タイトルに「流星」という言葉が使われていることが分かるのですが、実は、「流星=三兄妹」という例えでもあるわけです。だから、「流星の絆」というタイトルが付いたわけですね。

 

それを表すのが、三兄妹の長男・功一が、次男・泰輔にいった次の言葉です。

「俺たちって、流れ星みたいだな。」意味が分からず泰輔がだまっていると、彼は続けた。「あてもなく飛ぶしかなくって、どこで燃え尽きるかわからない。だけどさ――俺たち三人は繋がっている。いつだって絆で結ばれている。だから何もこわがるな」

両親を亡くして、自分たちだけで生きていかなければならなくなった三兄妹の将来に対する不安な心情と、それを三人の絆で乗り越えようという決意が表れていますよね。

 

「流星の絆」は三兄妹だけの絆ではなかった!

しかし、この「流星の絆」が三兄妹だけの絆だけを表した言葉でないことが、物語の最後で分かるんですね!

この先は、ネタばれも含まれるので、真っ白な状態でこの小説を読みたい人はあまり読まないほうがいいかも。

 

世の中に出た三兄妹は、長男・功一と妹・静香が人に騙されたことをきっかけに、自分たちが騙すほうの側になることを決意し、三兄妹協力して詐欺を働くことになります。

そして、偶然にも詐欺のターゲットにした人気洋食店の二代目・行成の父親が、自分たちの両親を殺した殺人犯である可能性が高いことを知ることになります。

 

そこで、この父親を追い詰めるために復讐計画を立てるのですが、その計画を実行する間に、何と妹・静香が息子・行成に恋心を抱いてしまうのです。

妹・静香の気持ちを知りながらも計画を実行していく兄の功一と泰輔の苦悩、愛する人を不幸に陥れる計画を実行していく自分に苦悩する静香。この辺になると、どんどん物語に引き込まれていきます。

 

しかし、僕が一番感動したのは、静香に騙されるかたちとなった行成です。『「流星の絆」は三兄妹だけの絆ではなかった!』というのは、実は、この行成のことを言っています。

行成がなぜ流星の絆に含まれるに相応しい人物なのかは、物語の後半を読めばきっと分かっていただけると思います。この行成の最後の行動が、この小説の読後感を非常に爽やかなものにしてくれています。

流星の絆 (講談社文庫)

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二宮和也・錦戸亮・戸田恵利香が三兄妹を演じたテレビドラマ版も、概ね小説の内容に近かったような気がします。ドラマを観たのはかなり前で少しうろ覚えですが…。

流星の絆 DVD-BOX

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