東野圭吾作品の世界

東野圭吾著作の書籍からその世界観を独断と偏見で解釈します!

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「パラレルワールド・ラブストーリー」に描かれたパラレルワールド

パラレルワールドとは、並行して存在する別の世界(時空)を指す言葉であり、SFにおいてはポピュラーなアイデアである。

しかし、東野圭吾が描いたここでのパラレルワールドは、そんなSF的なものとは一線を画している。というか、真のパラレルワールドを描いた作品ではないと言うべきであろうか。

 

こんな経験はないであろうか?

『いつも行くところに必ず現れる素敵な異性。そんな異性に抱く恋心。しかし、知り合いではないので声を掛けることができない。もし、勇気を出して声を掛けたとしても相手から変な目で見られるだけであろう。そもそもナンパのように声を掛けられて応じるような人なら、決して自分は魅かれたりはしなかったであろう。

所詮、あの人は違う世界の人間だと思ってあきらめるしかないのか。』

 

この物語は、これとよく似たシチュエーションから始まっている。この「あの人は違う世界の人間だと思ってあきらめる」というのも真のパラレルワールドではないが、パラレルワード的に捉えた考え方と言えなくもない。ただ、この物語で描かれているパラレルワールドにはその続きがある。

 

『その恋心を抱いた異性が、ある日自分の親友の恋人として目の前に現れるのである。その異性が身近な存在になったにも関わらず、親友の恋人ということで主人公は強烈な嫉妬に苦しむことになる。

しかし、ある朝目を覚ましてみると、その異性が自分の恋人として隣にいた。親友の恋人というのが現実なのか?自分の恋人というのが現実なのか?』

 

これが、この物語の中で描かれているパラレルワールドあり、SF的なパラレルワールドとは一線を画しているという理由は、是非小説を読んで確かめていただきたい。

パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫)

パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫)