東野圭吾作品の世界

東野圭吾著作の書籍からその世界観を独断と偏見で解釈します!

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11月15日発売の「疾風ロンド」のあらすじと感想

11月15日に発売になった東野圭吾氏の「疾風ロンド」を昨日読みました。

 

疾風ロンド (実業之日本社文庫)

疾風ロンド (実業之日本社文庫)

 

 あらすじは、以下のような感じです。

泰鵬大学の医科学研究所で極秘裏に開発された禁断の生物兵器「K-55」。拡散すれば人々を大量死に陥れる威力を持つ生物兵器であった。ある日、その生物兵器「K-55」が医科学研究所から盗まれた。犯人はその医科学研究所研究員・葛原であり、その生物兵器「K-55」の開発者であった。

 

犯人の葛原は、スキー場らしき場所で撮られたテディベアの写真を送り付け、「この場所と発信器を取り付けたテディベアを見つける方向探知受信器が欲しければ3億円を用意しろ。」と医科学研究所の所長・東郷を脅迫してきた。しかし、あろうことかその葛原が、脅迫してきた当日に事故で亡くなってしまう。

 

葛原が亡くなったことで方向探知受信器は手に入れることができたが、逆に、その写真の場所がどこであるのかが聞けなくなってしまった。おまけに、テディベアに取り付けられた発信器のバッテリーは1週間しか持たず、それまでに見つけ出さなければ回収不能となる。生物兵器「K-55」を納めたガラスケースは、10度以上になると破損する仕掛けが施してあり、そうなれば多くの犠牲者が出ることになる。

 

 

そこで東郷は、医科学研究所の主任研究員・栗林に「K-55」が隠された場所を突き止めることを命じる。栗林は、スノボー好きの息子の協力を得て、なんとかそれらしいスキー場を探し当てる。そして、息子を案内役に引き連れてそのスキー場へと向かうが、予想外の出来事が次々と彼等に襲いかかる

上記のあらすじだけを見れば、非常に緊迫した状況を想像するのではないかと思います。しかし、そんな状況とは裏腹に、なぜか緊張感を持って読み進めることができませんでした。

理由は、この事件の当事者たちが、なんとも間が抜けていてコミカルだったからです。

まず脅迫してきた犯人があっさりと事故で亡くなってしまいます。こんな大それた事件を引き起こした犯人のことだから、この事故死にも何か裏があるのかもしれないと読み進めたが、結局ただの事故死でしかなかった。僕には、なぜかこの犯人が間が抜けて見えて仕方がないのである。

次に、脅迫される側の研究所の所長と主任研究員のやり取り。これが結構笑える場面が満載なんです。この二人のやり取りが緊張感の無さを増幅させている感じがします。

極めつけは、この事件の裏に暗躍する人物。この人物が遭遇する最後の結末は、同情さえ禁じ得ないほど間が抜けたものでした。

 

僕としては、あまり余韻が残らない作品ではあった。しかし、一気に読んでしまえる引きの強さは、さすがに東野圭吾作品である。 

ところで、「疾風ロンド」には、「白銀ジャック」と同じ登場人物がいるらしい。僕はまだ「白銀ジャック」は読んでいないので、次はこの小説を読んでみようと思う。

 

白銀ジャック (実業之日本社文庫)

白銀ジャック (実業之日本社文庫)