東野圭吾作品の世界

東野圭吾著作の書籍からその世界観を独断と偏見で解釈します!

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小説「時生」で東野圭吾が伝えたかったこと

「過去に戻れるものならやり直したい!」

 

過去のことを後悔しても仕方がないことは分かっているものの、こんな気持になったことは一度や二度ではありません。僕にもやり直せるものならやり直したいと思う過去は一つや二つではなかったような気がします。

ただ、過去に戻ってやり直せたとしても、違う後悔を生じさせるだけのような気がします(笑)

 

この小説「時生」は、自分の後悔を正すために過去に戻るのではなく、若かりし頃の父・宮本拓実に会うために過去にタイムスリップする少年・トキオの話である。

若かりし頃の拓実は、どのような職に付いてもその短気な性格が災いして長続きせず、それを自分の不幸な生い立ちのせいにするという、心の荒んだ若者であった。

過去に戻ったトキオは、いずれ自分の父になる拓実の荒んだ心を徐々にほぐしていきます。しかし、トキオが過去の戻った本当の理由はそんな父を立ち直らせるためなんかじゃないことがこの小説を読めば分かります。それを感じながら読むと涙が止まらなくなります。

 

この小説は、映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」を彷彿とさせる内容ではあります。しかし、過去に戻ったそれぞれの息子の真の目的は全然違うところにあります。この真の目的がこの作品の素晴らしさを高めたと僕は思っております。

 

真の目的のヒントは、妻・麗子(トキオの母親)が夫・拓実に対して語りかけた言葉にありますので、是非トキオの真の目的が何なのかを考えながら読んで欲しいです。

時生 (講談社文庫)

時生 (講談社文庫)